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遺産分割でもめた場合は相続税が高くなるのか!?
2016.05.28
答えはNOです。
正しく届出を行い、すべての財産について分割協議が調った場合は、「最終的に」相続税額に違いはありません。
しかし、違いが無いのは「最終的に」ということです。
分割協議が調うまでの間は、多額な相続税を負担しなければならない場合があります。
相続税の申告期限はいつ?過ぎるとどうなる?
相続税について申告義務がある方は、10か月以内に税務署へ申告書を提出し、納付を行います。
遺言書が無い場合は、相続人間で遺産分割協議を行って相続財産を確定させ、それを基に相続税の申告をします。
たとえ10か月以内に遺産分割協議が調わない場合であっても、申告書を税務署へ提出し、相続税を納付しなければなりません。
この場合は、
①分割された財産は、取得した方が相続税を負担します。
②分割されていない財産(未分割財産)は、相続分(例:妻1/2、兄1/4、弟1/4など)に応じ、相続税を負担します。
その後、分割協議が調ったときに相続税の計算をやり直し、実際に財産を取得した方がその分の相続税を負担するようになります。
他に損することはあるの?
また、未分割財産の状態では「配偶者の税額軽減」「小規模宅地の特例」の適用ができないことも注意点の一つです。
「配偶者の税額軽減」は配偶者については財産の1/2又は1億6千万円までは相続税がかからないという特例、「小規模宅地の特例」は例えば居住用宅地は評価額の80%を減額できる特例です。
これらは相続税額を大きく圧縮できます。
もし10か月以内に分割協議が調わない場合はこれらの特例は使えず、さらに自分のものと確定していない財産の相続税をいったんは払うことになります。
その際に「申告期限後3年以内の分割見込書」を申告書と併せて提出すれば、3年以内に分割した場合には特例を適用することができます。
また、分割協議が泥沼化して裁判に発展した場合等には「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出し、分割後に申告書(更正の請求)を提出すれば特例の適用は可能です。
これで、ようやくもめずに遺産分割された場合と同じ相続税額に清算されるのです。
以上のとおり、税務上の観点からも、早期に分割協議を調えることは大変有効です。
残念ながら10か月以内に遺産分割協議が調わなかった場合は、相続税申告書以外に分割見込書を忘れずに税務署に提出するようにしましょう。
この記事を書いた人
若山昌美
税理士 大妻女子大学短期大学部卒業、役員秘書として鉄道会社に8年間勤めた後、税理士を目指して転職し、税理士資格を取得する。相続税について一般向け、銀行行員向け、会計事務所職員向けのセミナー講師や、ハウスメーカー主催の相続相談会の相談員を務める。中央区立女性センターの登録団体である女性士業ネットワーク「FLAPはばたき」代表。 常世田正之税理士事務所 所属税理士